草原に黒い十字架を       74,11,9 放送
監督:神代辰巳、脚本:山本邦彦 出演者:船戸順、瀬島充貴、大村千吉、刈谷俊介  
解 説
今回は『傷だらけ・・・』唯一のファンタスティック、メルヘンチックなニュアンスを取り入れた、とってもとっても美しいストーリー(ちょっと苦しいかも)なのです。そう、母に死なれた寂しい少女の物語なのです。 それを、いつものように『傷だらけ・・・』調を絡め、面白く、そして切なく悲しい物語に仕上がっているのです。
もうひとつ今回は、いわゆる「傷だらけソング」がほとんど使われていません(たしか最初だけ)ドラマ全体にクラシック(曲は知りましぇ〜ん)を使い、よりメルヘンモードを高めています。
さて...
まず私は、言いたい!今作の『傷だらけ・・・』に於ける意義は非常に大きいのだ、、、と! 今回でオサムのキャラの中にハッキリと『子供好き』が加わった事なので〜す。 仕事を捨ててでも少女の為に何かをしてあげようと懸命な彼の姿は、ヒューマンドラマ『傷だらけ・・・』のある意味基礎にもなっていると感じまるのでありま〜〜す!
誰が見ても中途半端な25歳の若造、そして一児の父親でもある...母親は死に親戚 に子供を預けひとり東京で、ちゃんとした仕事にもつかず探偵の下請けをやっている..素行は至って悪い。
典型的無責任な親かと思ったら、どうしょうもないくらい子供(健太)を愛している。そいはドラマ(全話通 して)随所で表現されている。ただ中途半端ではない、根底に愛をしっかりと持っている。 救いようのないチンピラの一面の中に、純粋に息子を愛する親という、つじつまの合わない...いや、実に生身っぽい...そう、木暮修のこのようなキャラがかえって感情移入しやすくなっているのではないのか、なんて私は思ったのでありま〜す。そして子供もそんなオサムと他をしっかり区別 しているのです。(子供はちゃ〜んとわかっているのです)...。

核心の前に今回のおもしろポイントをご紹介しましょう... そーです、話題の文句や歌が今回も登場しております。
『貧しいオカマ』...これはアキラが「男同士で子供できるかな〜?」なんて発した為、オサムが嫌味を込めて放った言葉でした。そして子供(ケンジくん)にも言わせてからかう...この『貧しいオカマ』は当時かなり話題になった言葉で学校や巷で良く使われて、一種のハヤリになったのでした。
「どーせ盗むんだったら3台盗め!・・・子供用とオレ用とお前用の婦人物と・・・」
またどうでもいいカットで大爆笑ってのもありました(なんで入れたんでしょうね?..)
「このお兄ちゃん臭い!」「そんなにポマード臭い?」「ううん、違う臭い・・・」 そんでもっての『たまらん節』の登場となったのです。 また、テンプターズでの名曲『おかあさん』を3人で歌ってるところは中々の名場面 になってます。

さて物語の話といきましょうか... 今回のキーポイントとなる『六月のマドンナ』なる絵... まー、これが笑っちゃいけないがモナリザを中学生が描いたようなパクリもんで、ここにも設定のいい加減さがかい間みられる。もちろん今ストーリー全体がいい加減と言う事では決してない。 『傷だらけ・・・』にはしっかりとした脚本がある。それをベースに制作している過程の中にうまく『外し(オチみたいなもの)』を取り入れているのではと感じます。ドラマでありながらどこか現実っぽい、また人間臭い(ぶっちゃけ、かっこ悪い)、真面 目に作ってるようで、なんか遊びみたいなものを感じる...そして今回の『六月のマドンナ』時価2億円、さあどんな絵だ!、と思ったらモナリザ崩しで苦笑い(そー来たか)、これはまさに『傷だらけ・・・』のパターンだと感じた。しかし更に制作者は上手をいった、警備員だ。誰が配役したのか、なんと『大村千吉』さんを起用しているではないか...いい加減な絵の展示、へんなセキュリティー機器、これだけでも笑ってしまうのに大村さんでダメ押しに来た!、この憎い『オチ』には脱帽しちゃいましたよ..。大村千吉と言う名前は知らないけど、この顔は見た事ある..なんて人沢山いらっしゃるんじゃないでしょうか..。東宝の特撮もの『キングコング対ゴジラ』『モスラ対ゴジラ』他多数出演しておりました。また黒澤映画やクレージーもの等にも出ていましたね、皆ちょい役、死に役、へんな役ばかりで『ナンバーワン怪優』とも言われてます。もちろんテレビにも出ています『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』『怪奇大作戦』等々・・・特撮、快獣ものの申し子みたいな人です。一度見たら忘れない忘れられないインパクトある顔相は誰もに知られている事となっています。そんな大村さんを警備員役で出しちゃうなんて、なんと大胆な、うさん臭さに太鼓判押したようなもんなのです。そして大村さん、今回もやっぱちょい役で終わっております..。

今回の中心となる少女ナツメちゃん...容姿はお世辞にもかわいいとは言えないが愛着を感じさせる素振りが逆にリアリティーを感じドラマを何重にも厚くしてくれました。また家庭環境からくるだろうと思われるようなセリフが時にメルヘンチックに、時に現実的に私達をドキッとさせる。そしてオサムもそんなナツメちゃんに振り回されるのである。そんな中、次第にひとつになろうとしているオサム、アキラ、ナツメの別 れはあっけないものだった。もちろん現在では放映するにあたいしない映像に誰もが目を疑っただろうと思う。 あえて強烈な別れは、私たちをメルヘンの世界から現実に戻し、世の中の不条理を思いっきり皮肉ったのかもしれない...まさにオサムは茫然自失、ナツメの真似をするのが精一杯だった...。
何とも言えない幕切れではあったが、ラストカットのオサムアキラの男意気に希望(未来)を見い出そうではありませんか...。

・・・・・・・・・・物語の話がほとんど出ていないような気もしますが...深く考えずに流しましょう....では次回に..。

これ健太くんが描いたパパの絵
時価2億円!・・です。
今回のマドンナ..ナツメちゃん
この人たちが警備員、だそーです。
ホー、ホー、...何がホだバカ!
今回の悪いおじさんたち
仲良しケンジ君とナツメちゃん
ったくお前は貧しいオカマだな
おーママママ〜♪
新聞に載るような事、だそーです。
アキラ〜、お前..でかいなぁ〜
どっちが大物だ〜、、、「そっち」
うぅ〜ん、、違うにおい...
たまらん、たまらん、たまらんぜ〜♪
ナツメちゃんのね〜この目!
・・・・・・・
ナツメ...約束守ったからな..