自動車泥棒にラブソングを       74,11,16 放送
監督:恩地日出夫、脚本:市川森一 出演者:川口晶、西村晃、蟹江敬三、高橋昌也    
解 説 
今回はメインゲストに川口晶さんを迎えとても意義ある作品が出来上がりました。
監督、恩地日出夫、脚本、市川森一のメインコンビ(たぶん)の熱い熱いメッセージが私の心に火を付けたのです(ちょっとオーバーでしたかな「(^^; ) )
しかし この作品には『傷だらけ..』の原点みたいなものを感じてしまうのです。

まずこのドラマにはいくつかの構図が想像出来る.. オサムたちには子供(半端者としての)の構図、綾部さんたちは大人の構図、海津警部には権力の構図と言うような感じなのだが、子供の構図としてあくまで半端なオサムとアキラと哀れな田舎娘、その子供をビジネスに利用する大人の構図が見える、そしてその大人に権力が絡む様子、とかなりはっきりとした構図ではないだろうか...まあ権力の構図は各話によって変化していくが、子供、大人の構図は『傷だらけ..』のコンセプトのひとつと言ってよいのではないだろうか...

のっけからアキラとの別れのシーンも、どこか虫の良い就職広告から始まるが、これまさに子供大人の構図がはっきり見える、単純に率の言い話に乗る子供とそれを手ぐすね引いて待っている大人、みえみえでも子供には分からない..実は私も引っ掛かりそうになった事があるのです。
『ソアラの運転お願いします!月給30万円以上』
これ見てすぐ面接に行きましたが...行ってみてびっくり!バッグ貴金属のセールスでしかも地方を流して売り渡る...いわゆるチー公と言うやつです。かなり凄まれて逃げるように帰ってきた記憶があります...ホントあの時はやばかったっす\(〇_o)/

そしてすぐに大人の構図に弄ばれる子供たちの姿が見えるのです。オサム達の脱線もそんな大人たちへの反逆なんでしょう(もちろんドラマを面 白くしなくちゃ〜ね)、そして単純淡白な流浪?の旅は子供の構図の極地なのだが、やはり単純な所に伏線を用意していましたね、恩地市川先生たちは...まあ伏線は観てのお楽しみとして、この旅に私は別 のコンセプトを見つけました。それは『若さの光と影』です...
雑踏の都会では生きる場所を持てない野良犬たちが、なんと生き生きしているのでしょう..観ている私たちにはこの旅はもう間もなく終わるだろうとわかっているのですが、この一瞬の絵面 は輝き、そしてこの若者たちにいくつもの可能性を与えているように映ります。そういつまでも続く旅のように..
そして川口晶さんが途中銭湯行って化粧を落としましたが..素っピンになった彼女は『ドキッ』とするくらい魅力的で、それは化粧女からは到底感じ得ない香りを放って輝いているようでした..。
これも先生たちの粋な演出なのでしょう、きっと。

若さに於いて実にバランスのとれた男2人と女1人の組合せ(非バランスこそ若さの象徴)..成りゆきの愛に貪り付く男女と溢れる男の構図もまた若さ独特の酸っぱい味のするもので、当時では自分自身と重なって見え今では忘れてしまった何かをを思い出させてくれる.....それが又たまらない。
彼女との別れ際で語ったオサムの言葉...まさに『かっこいい〜!』そしてなんと『いい加減!』..この非バランスこそが『傷だらけ..』最大の魅力なのです...(絶対!)
...そして最後は大人の構図にやはり吸収されて行く3人の若者の影が寂しく映る..。
若者の矛盾に比べ大人の矛盾は実に汚い救われないのだ..自分達がまいた種を他人に刈らせ面 倒になれば始末する..なんと不条理な事だろう、しかしこれが現社会では当たり前の構図になっている事実なのだ。
そして辰巳さんはこう言って締めくくった..
「ははは...オサム命拾いしたな!」
...はたして命拾いしたのはオサムなのだろうか...
.. ここでも大人社会の都合主義が見えかくれしてならない...

いよいよ『傷だらけ..』屈指のラストシーン・・・ 粋に振舞うオサム、戸惑うアキラ..観客(私たち)はオサムの高鳴る鼓動を聞き、同時にすぐそこの絶望を突き付けられている...この非バランス的光と影の演出はもう胸が掻きむしられる思いとなって私たちを襲う...
そしてオサムはそれをよそに軽快にペントハウスを後にする...。

コンセプト1:ポマード

コンセプト2:アメ車
コンセプト3:FUCK!
そしてオサムとアキラ
大人の構図
それに群がる権力の構図
領収書もらって来たか?
アキラちゃんの酸っぱい哀愁
とても素敵な素顔です..。
オサムの未来はきっと・・・