可愛いい女に愛の別れを       74,12,28放送
監督:土屋統吾郎、脚本:高畠久、山本邦彦 出演者:吉田日出子、船戸順、加茂さくら、田口計

岸田今日子と綾部貴子と傷だらけの天使
この『傷だらけの天使』のレビューを始めて4年以上はたつのかなぁ?、もういつから始めたかも忘れてしまったようです..
また前回のレビューも1年程間隔が開いてしまったと思われ..かと言って別にやる気がない事は決してなく、いやその逆と言っていい..
このレビュー作業の時間は旧友オサムやアキラに会える、とっても大切な時間なのだから...
しかし半年で終わった作品を4年も使ってまだ12話までしか進んでおらず、この先どうなることやら..まあ焦らず騒がずのんびりとやって行こうと思います。

さてこの1年の出来事として、2006年12月17日『綾部貴子』演じる岸田今日子さんが亡くなられている。76才だったそうです。
このニュースを聞いた時「『傷だらけ..』の名優がまたいなくなってしまったなぁ」と感じたのを思い出す。
年令を聞いて分るように岸田さんの女優暦は長く多くの作品に出演されているのですが、私にとっての岸田さんはいつもいつの時でも『綾部貴子』以外何ものでもなかったのです。当時『綾部貴子』らしきキャラに出くわした事のなかった私はいっぺんに参ってしまったほど..
古い大きな屋敷に住んで気味の良くないレコードを聞き、身に着けている服もレトロっぽく無表情で性格を容易に読ませないほど落着きはらっている..足が悪く杖をついて歩くが時折その杖は『綾部貴子』の怒りを表現する道具と化す..綾部さんが登場するたびに私なりに彼女を理解しようと試みたがいつもさっぱり分らなかった。‘食事を見られる事がSEXを見られるよりも恥ずかしい’とする彼女の倫理観は常人には到底理解できない..『猛烈にプライドの高い女』である事だけは言えるだろうと思われるが...第9話『ピエロに結婚行進曲を』でプライドを傷つけられた彼女の心の同様をかいま見る事が出来た、この時の彼女の怒りの表現は『岸田今日子』の熱演によって見事に映し出されている..。
とにかく彼女に関する事は『謎』だらけ、仕事に於いてもオサムたちにやらせている仕事がすべてとは到底思えず他の仕事の部分も少し見せて欲しかったですなぁ..『綾部貴子の本当の顔』『綾部探偵の本当の仕事』..かなり興味そそられますが、最終回の最後までやっぱ『謎』でした。そう『謎』が似合う女なのです、彼女は..

力んで話すものでもないが『綾部貴子』は『傷だらけ..』になくてはならぬ存在、そして綾部貴子は『岸田今日子』以外どうしても考えられない..いや他の人では絶対に演じ得ない役柄なのだ。岸田さんが放つオーラは綾部貴子と同化し作品の深さ怪奇さを絶えず維持させてくれた..がゆえに作品がプカプカ浮いたものではなく『おもり』をしっかりぶら下げた内容になったのかとも感じる...
『傷だらけの天使』はショーケン、水谷豊、岸田森、岸田今日子の4人がそれぞれの役名と同化した事で作品インパクトを維持したと言えるだろう..もちろん、それとは別に監督、脚本の良さがあるのは当たり前の事としておく...。そして味付けとして強烈にコラボしたのが『井上尭之バンド』だった。彼らの曲は作品の中で第5番目のレギュラーと言って良いほど要所のインパクトを深めてくれた...レギュラー4人と絡む音楽、これが『傷だらけの天使』のドデカい土台だと私は思っている...。その土台に入れ代わり登場するゲストが加わると作品がまた何倍にも面白くなる..もう毎回笑ったりへこんだり...『傷だらけの天使』はこの絶妙なバランスをもって多くのファンに支持されたのだろうと思っている。
そして、その重要人物のひとり綾部貴子、岸田今日子さんがいなくなってしまった。とても残念でならない...あれから三十数年の時が流れ、これも仕方のない事なのだろうか..只々ご冥福を祈るばかりである。
しかし彼女はいないが作品は今になっても尚、煌々と輝き生き続けている(と私は思ってる)...さあレビューもまだまだ半ば、頑張るかぁ!


解 説 
いつものレコードが流れる綾部事務所から今回はスタートする..。
今回のお話は..東西カメラなる会社が倒産した、その債権者が25億の使途不明金がある会社に偽装倒産の疑いがあるとみて調査を依頼してきたのだ。
東西カメラ社長犬山は行方をくらましている..さあどうしたものかという場面であるが、そこで綾部さんはひらめいた!ひとり娘の昭子(吉田日出子)を誘拐して犬山社長をひっぱり出す計画を立てた..。もちろん、お役はオサムとアキラ...今回もいや〜な予感でワクワクドキドキ!・・・楽しみだどo(^∇^)o

さあ今回のメインは吉田日出子さんですね、個性豊かな女優さんで今回もスッカリ溶け込んじゃってます。
劇団文学座出身、テレビ、映画、舞台と何でもござれで今でも現役、ご活躍されています。当時はやっぱテレビが多かったですかね、なんたって、あの『ゲバゲバ90分!』にも出演、キャラ生かしてましたぞ!ドラマは単発が多かったようですが、のちに映画『上海バンスキング』『社葬』などで高く評価されたようです。
今回も、なんかトッポイところを上手く生かし社長令嬢をとっぽ〜く演じてくれました。

さて場面は代わってペントハウス、なにやら聞き慣れぬクラシックなんか流れて..なんかおかしいぞ、と思ったら早速社長令嬢がいるじゃありませんか、しかし、どう扱って良いのか分らぬ様子のオサムとアキラ、経費は嵩むばっかでんな..。
この吉田日出子さんとの見せ場も多く、シリーズの中でもインパクトの強い場面がバッチリ入っております。
お嬢様はテレビもろくすっぽ観てないのでしょう、画面は『うわさのチャンネル』を映している、ゴッド姐ちゃんの場面だ..この『うわさのチャンネル』当時人気があった。私も毎週観ていた...しかしレベルの低さでも群を抜いていた。そこに出て来るデストロイヤーがお嬢様のツボに入ったようで、アキラと一緒に笑い転げていた..そして始まったのがデストロイヤーマスクをかぶってカッコーの三重唱、全くもって爆笑アンド驚きですな、だってショーケンがデストロイヤーですぜ、よくやってくれなって感じ、しかもカッコー歌ちゃったしね..“傷だらけベストカッコー(格好)賞”決定!
お風呂シーンもまた有名..アキラお背中洗いながらさりげに浴槽へin、体を洗っている手には履いていたパンツ、やるねぇアキラちゃん!と思ったらお嬢様泡だらけの浴槽に石鹸を落とす、まさぐっているとアキラの妙な顔、そしてお嬢様「あ!お父様とおんなじだ」と来たもんだ、誰もが苦笑爆笑大爆笑!もう止められません『傷だらけ..』は!...しっかし吉田さん当時30才、ようやるよ。
その後も三人が織り成す漫才はまだまだ続くのであるが、ここらで一息、いやドラマに目を向けてみよう...。

犬山社長にコンタクトをとった辰巳さん、娘の話で社長を揺さぶったまでは良かったのだが、その社長ホントにいなくなってしまったのだ。
そこでオサムに娘から情報を聞きだせと命ずるが嫌気がさしたオサムちゃん、結局アキラとお嬢様の社長探しの珍道中が始まるのです..。アキラはお嬢様と気があってるようだ。まあ「おつむの程度」が同じっつー事とも言える..しかしアキラとゲストのシーンは好感が持てるだよなぁ..10話で‘小松の親分’が出た時も二人のカラミは笑いを越えた暖かみがあった、今回もまさに‘それ’だ!そしてそれを包み込むオサムの‘ふところ’がその効果を倍増させてくれる...二人がコロッケを美味しそうに食べるシーンも『傷だらけ..』記憶としていつまでも残っている..。
え〜戻します、、そんなこんなで浮上するのが社長の弟(田口計)だ。どうも怪しい、アキラの犬なみの鼻はしっかり覚えていたのだった〜〜!
と、私たちは鼻はきかぬが『田口計』さんの登場で「あっ、犯人!」と決めつける事ができる..そう悪役の常連、5話の『近藤宏』さん同様悪の顔やっております。田口さんは東大出身の超エリートさんなんですがドラマでは悪役専門だったっすかねぇ、またナレーションや声優もよくやってたようですが私の印象は『ザ・ガードマン』での悪役ですね〜やっぱ、田口さんよく出てくるんですよ...当時は顔だけはしっかり覚えましたよ「あ〜また悪い奴が出てる」ってね!そして今回もやっぱり犯人、しかし格なんでしょう、オサムアキラ共に凄み暴れましたが田口さんには指一本触れる事はありませんでした..。
そして加茂さくらさん、社長と一緒にいたと思ったら今度は弟と‘親子ドンブリ’ならぬ‘兄弟ドンブリ’でしたたかな女やってるのかなと思ったらアジャパの最期だもの、これも『傷だらけ..』の特徴で‘何がどうしてどうなった’なんて説明は今回もまったくありませ〜ん!ご想像におまかせしまーす。
加茂さくらさんは宝塚出身のこちらもエリートなのですが今回パッとしませんでしたかな...しかしアキラとの場面は良かったんじゃないっすか?「くーるぼあいじぇっつーの、あれ飲まされちゃって..」おもいっきり笑っていたら間髪入れずに社長の死体!アキラ得意のおののきは今回口に手をあてていました。大爆笑!...しかし酒飲んで堂々と運転して帰ってあの場面、今じゃ、でっきねぇ〜だろうなぁ〜  (ノ-.-)ノ....●~*

犯人逮捕で一件落着、今回はハッピーエンドかな?な〜んて思っていたら、やっぱり寂しい終結でした..途中出てきたズロースは伏線だったのです..
オサムの最後の言葉は、アキラを我々を一気に現実に引き戻しドラマは静かに終わっていきます、果敢ない夢の終わりです...    2007.6

寂しげな綾部さん
漫才その1
犬山社長と加茂さん
漫才その2
気持ちよさそなアキラ
漫才その3
漫才その4
綾部と辰巳も漫才
アキラの寂しげな歌
漫才その5
ずぶ濡れの二人
どうぞ、ハイ!ごちそうになります
アキラ、トランクに何か入れたか?
アキラの頭の中
田口さんと船渡さん
さようなら、お嬢さん..