港町に男涙のブルースを 74,10,26
放送
監督:神代辰巳、脚本:大野靖子 出演者:池部良、荒砂ゆき、田島義文
ストーリー
オサムは頻繁におこっている冷凍エビの抜荷事件を調べる為、小さな港町へ派遣される。
ある晩、オサムは町の女をくわえこんで連れ込み宿で寝ていると突然、男達に襲われる。
裸同然でその場から逃げ出したオサムはどうやらこうやら小さなバーへ辿り着いた。
そこでは酔いつぶれかけた男(梶:池部良)に絡まれ困惑していたが、なんとまた別
の二人組に襲われてしまう。その場を梶に助けられ梶の家に転がり込むことになった。
梶はヌードスタジオを経営していてそこにはモデルとしてアケミ(荒砂ゆき)梶の女が働いていた。
変な縁で梶と親しくなったオサムだが、そこに何やら臭う気配を感じたのだった...。
解 説
今回も素晴しいゲストが出演しています。 今作の主役となった池部良さん、池部さんの元上官役の田島義文さん、そしてヌードモデル役の荒砂ゆきさん。
まずは池部良さん、往年の大スターです。その昔は「青い山脈」等の青春スターでもあり後に戦争ものや東宝特撮もの、そして仁侠映画と幅広い役をこなしていらっしゃいましたが、個人的には「潜水艦イ-57降伏せず」と言う作品が好きです。敗戦濃厚の日本を救うため和平工作の為出港する潜水艦、その艦長と艦員たちの壮絶な戦いとその最後を描いたドラマ、心熱くした作品でした。艦長役の池部さんの演技には、まさに惚れました。かっこ良かったっすよー!もちろんこの作品も含めすべてリアルタイムでは観ていません(あたりまえですね)、随分と後になってから観たものばかりです。当然「傷だらけ・・」の時も顔と名前は知っている程度だったわけです。
「傷だらけ・・」の場合リアルタイムで観た時の方が良かったと思う作品と今観た方が良かったと思う作品とはっきり分れます。私の場合前作や今作は今観た方が良かった事になります。もう一度今作を観直してみて改めて『男・池部良』をしかと感じる事が出来ました。...がしかししかし登場シーンは肩透かしくらいましたね。酔いつぶれかけたおやじとして登場、オサムに臭い息をはきながら絡むシーンはよく池部さん引き受けたなと思いましたね。しかし演技は見事、いかにも臭そうなおやじとオサムのシーンは思わず笑っちゃいました、ハイ。しかも小汚いヌードスタジオで観光客相手に稼いでるチンケな役...アル中でヌードスタジオのおやじ...ますます「池部良」の役とは思えぬ
...いやいや逆を言えばまるっきり違った「池部良」を見れたのかもしれない...う〜ん難しいですなぁ。まあ後半からは『男・池部』の本領発揮となった訳だからドラマとしては中々の演出と良いでしょう。ここでも元軍人としての役をやってますが、やっぱり格という意味でリアリティーがありますね。
そして軍人梶のにっくき上官柳田役が、なんと田島義文さんなのです。この人も色んな作品に出てました、特に東宝ゴジラシリーズの多く出演していたのが印象的ですが個人的にはやっぱり「ウルトラQ」ですね。桜井浩子演ずる由利ちゃんが勤める毎日新報の上司関デスクを演じてました。毎回の出演ではありませんがサビを利かした役どころが良かったです。その他の作品でも言える事だと思いますが、いわゆる名脇役と言って良いでしょう。そうです『往年の大スター対往年の名脇役』って事になるわけです。
最後に荒砂(あれさ)ゆきさん、はっきり言って無名の女優さんですが本作で非常に良い演技を見せてくれてます。また「ウルトラQ」‘ゴーガの象’や「ウルトラマン」‘人間標本5・6’にもしっかり出演してるんですね〜、当時は本名『田原久子』になってました。詳しくは別
の部屋でお話したいと思っています。さて今回の役所は池部さんが演ずる梶が経営するヌードスタジオのモデルで梶のオンナと言う設定になっていますが、この人も凄い!前回の中山麻理さんがスレンダー美ならこちらはまさに肉体美!オンナ臭さや蒸れと言う男がまさにソソル役をそして男好きをバッチリ演じてくれてます。こう言う女...私、好きなんですよ〜...。
そして男の世界にうまく順応し作品に溶け込む、そして彼女のとった最後の行動は...。
作品全体の評価は、一言で言って『もったいない』と言いたいですね。また2時間枠で放送出来れば良かったなと感じました。逆に言えば1時間では『辛い』のです。作品内容が膨れ上がってしまったのでしょうか?かなりフィルムを切り貼りした感じの印象なのです。だからストーリーがぎこちなくなってしまって意味が通
じない個所もあった感じです。焦点を絞った方が良かったでしょう、『往年の大スター対往年の名脇役』がもっと表現出来ていればかなり完成度の高い作品になったと思いますし、単に『男・梶物語』でも良かったと思います。何度も観ている私としては本作をかなり理解出来たと感じていますが、説明がいると言う点では本作はちょっと辛い作品になってしまったかもしれません。
※このレビューを執筆中「潜水艦イ-57降伏せず」に出演の三橋達也さんの訃報を聞きました。心より御冥福をお祈り致したいと思います。2004.5.20
|